北海道新聞(12/07 08:28)
米系投資ファンド、スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンドが作成したサッポロホールディングスの企業価値向上策の全文が六日、明らかになった。社名の「サッポロビール」を変えることを求めたほか、ビール事業では「エビス」など三ブランドへの集約を提言した。
向上策は十一月八日に提出。業績が低迷するサッポロの経営改善を目指し、作成された。サッポロの市場シェア低迷は、サッポロという地域名を企業ブランドに冠しているのも一因と指摘。全国ブランドの「エビス」の活用など、社名変更も含めてブランド戦略の根本的見直しを指摘した。
ビール事業では「エビス」「黒ラベル」と第三のビール「ドラフトワン」に集中、発泡酒など弱いブランドを整理する事業再構築を求めた。工場合理化などで高収益を目指すべきだとした。
不動産事業は、複合商業施設「恵比寿ガーデンプレイス」(東京)や銀座のビルテナント見直しなどで賃料収入が九十億円以上増えると指摘。札幌の複合商業施設「サッポロファクトリー」は分譲マンションへの転用や一部駐車場の商業施設への転換を提案した。赤字のサッポロ飲料とサッポロライオンは「早急に事業継続の可否を検討し、株主に説明を」と迫った。
サッポロ、スティールに対する買収防衛策の判断へ
2007年12月07日 asahi.com
サッポロホールディングスは6日、米系投資ファンドのスティール・パートナーズによる株式公開買い付け(TOB)提案の評価期間に7日から入る、と表明した。買収提案の詳細をただすサッポロ側の質問に対し、スティールが3度目の回答書を提出してきたことを受けたもので、来年3月5日の評価期間終了までに、サッポロは買収防衛策を発動するかどうかの結論を出す。
●今後の展開 3つのシナリオ
サッポロがスティールを「乱用的買収者」と認定するかどうかが、今後の焦点だ。弁護士ら第三者でつくる特別委員会に諮問するなどして判断することになるが、認定すればサッポロは買収防衛策を発動する。認定しない場合でも、サッポロ経営陣は評価期間が終了するまでに、スティールのTOBに賛成か反対かを表明する。
サッポロ経営陣の判断内容によって、今後は三つの展開が予想される。
◇ケース1 乱用的買収者と認定
ブルドックソースの買収を仕掛けた際、スティールは高裁によって乱用的買収者と認定された苦い経験がある。TOBを突然に開始したことや、買収後の経営方針を十分に説明しなかったことが裏目に出た。
今回は、スティールはサッポロの「ルール」に従って友好的に手続きを進めている。先月上旬、サッポロに提示した第2次回答では、約170ページに及ぶ説明資料を作成。丁寧な対応を続けている。
こうしたスティール側の努力にもかかわらず、乱用的買収者と認定されれば、買収防衛策としてスティールを除く既存株主にサッポロの新株予約権が割り当てられる。スティールの持ち株比率を引き下げるためだ。買収防衛策が発動された場合、スティールが差し止めを求めて、訴訟を提起する可能性が高い。
ブルドックのケースでは、株主総会で認められた防衛策だった点を最高裁は重視、スティールの差し止め要求を退けた。サッポロも、買収防衛策は今年3月の株主総会で導入を決めている。
◇ケース2 乱用的買収者と認定せず、TOBにも賛同
スティールの提案通りにTOB手続きに入ることになるが、可能性は低い。
TOBが成功し、サッポロがスティール傘下に入れば、両者が協力してサッポロの企業価値の向上に取り組むことになる。
スティールはすでに、サッポロの企業価値向上策として、(1)他社に対して競争上優位にあるプレミアムビールや業務用ビールへの特化(2)東京・恵比寿ガーデンプレイスの本社と記念館の移転による開発、などを提言している。スティールの子会社となったサッポロは、この案に沿って自らの株価を高めるよう努める。
◇ケース3 乱用的買収者とは認定しないが、TOBには反対
サッポロは、買収防衛策を発動しない。TOB提案が取り下げられない限り、発行済み株式数の66.6%を上限に取得を目指すスティールと、サッポロの現経営陣のどちらに経営を任せるかは、株主たちの判断に委ねられる。
スティールとの「真っ向対決」に向けて、サッポロは布石を打っている。
10月には、不動産事業で米系モルガン・スタンレー証券と提携すると表明。来年2月には、大阪工場の土地活用策も含む新たな中期経営計画を公表する。一連の動きからは、現経営陣のかじ取りの確かさを強調し、株主の支持を取り付けたいという狙いが読み取れる。
ただ、サッポロはビール市場では苦戦している。スティール傘下で立て直しをはかる方が良いと、株主が最終的に判断する可能性もある。スティール以外の企業が支援者としてサッポロ株を取得し、業界再編に進むことも考えられる。