12月21日12時27分配信 毎日新聞
警察庁は21日、暴力団による恐喝被害金や用心棒代の返還を指定暴力団トップの組長に求めることができる損害賠償制度の新設や、抗争時に相手を狙撃した組員が刑務所を出た際に行う「出所祝い」など、金品提供の禁止を盛り込んだ暴力団対策法の改正を行う方針を固めた。資金源を封圧し、拳銃発砲事件など組織的犯罪を防ぐのが狙い。来年の通常国会に改正案の提出をめざす。
同庁は、組員が恐喝などで得た利益は、上納金として上層部に集まり、最終的に指定暴力団組長らの利益になっていると分析。組長らは不正行為を止めることもできることから、所属団体の組長だけでなく、指定暴力団トップにも損害賠償責任があると判断した。
また、抗争相手を狙撃した組員(ヒットマン)に出所祝いをし、組での地位を昇進させていることが犯罪に拍車をかけているとみて、組員が刑務所を出て5年以内の金品受け取りや地位の昇進を禁じる。
さらに、暴力団に対する訴訟を起こした被害者や暴力団事務所の使用差し止め請求を行う人を保護するため、組員による嫌がらせ行為を禁止する。
行政対象暴力の抑止も図る。これまで、許認可や入札参加の強要などは、職員に対する脅迫、強要容疑などを立件してきたが、容疑に至らない段階でも不当要求を禁じる。
同庁は、今年に入り、長崎市長射殺事件(4月)、佐賀県武雄市での病院内射殺事件(11月)など拳銃使用事件が相次ぎ、組長らの責任追及が困難だったことから、新たな改正の検討を進めていた。【遠山和彦】
暴力団対策法
92年施行。都道府県公安委員会が指定した組員が、暴力団の名前を示して用心棒代を要求するなどした行為に中止命令を出す。従わない場合は懲役刑を含む罰則がある。93、97、04年の3回改正され、組員以外の暴力団周辺者が組の名前を示して行う不正行為も禁じるなど、段階的に規制強化を図っている。
最終更新:12月21日12時27分